華亭鶴唳
読み方:かてい かくれい
意味
故郷や、かつて栄えていた頃を懐かしく思い、もはや取り戻せないことを嘆く気持ち。特に、失意・没落・死を目前にして、自由だった昔や故郷の情景を切なくしのぶ場合にいう。
由来
中国・西晋の文人である陸機(りくき)が処刑される直前、故郷の華亭(現在の中国・上海市松江区付近)で聞いた鶴の鳴き声をもう一度聞きたいが、かなうだろうかと嘆いた故事による。陸機の処刑は太安二年(303年)。この逸話は5世紀前半成立の『世説新語』などに記されている。
備考
日常会話ではあまり用いない、故事に基づく文語的な表現。「単なる郷愁」よりも、失われて取り戻せない故郷・栄華への痛切な惜別や後悔を含む。
補足
- 「華亭鶴泣」と書くのは誤り。正しくは、鶴の鳴き声を表す「唳」を用いて「華亭鶴唳」とする。
- 単に故郷を懐かしむ明るい気持ちにも使えると誤解されることがあるが、通常は失意や取り返しのつかない喪失感を伴う。
例文
- 帰ることのできない故郷の写真を前に、彼は華亭鶴唳の思いに沈んだ。
- 長年勤めた会社を去る日、若い頃の仲間を思い出して華亭鶴唳の感を抱いた。
- 戦火で故郷の町並みを失った人々にとって、昔の祭りの記憶は華亭鶴唳そのものであった。