無縁慈悲
読み方:むえん じひ
意味
仏教語。自分と他者、親しい者と疎遠な者、好きな者と嫌いな者などを分け隔てず、いかなる対象にも執着することなく、すべての衆生を救おうとする仏・菩薩の慈悲をいう。「縁がない人には慈悲を示さない」という意味ではない。
由来
大乗仏教における慈悲の考え方に由来する。中国で鳩摩羅什が5世紀初め(402~406年頃)に漢訳したとされる『大智度論』には、慈悲を「衆生縁・法縁・無縁」の三種に分ける説が説かれる。無縁慈悲は、そのうち最も高い慈悲で、対象への執着や差別を離れた仏の慈悲を指す。日本へは仏教思想とともに伝来した。
備考
主に仏教思想・宗教哲学の文脈で用いる語。日常語としては「見返りを求めない、分け隔てのない慈悲」の意味で比喩的に使われることもある。「無縁」を“関係がない”とのみ解するのは不十分。
補足
- 「無縁」を単に「関係がない」「身寄りがない」の意味に取り、「縁のない人には慈悲を示さないこと」と誤解しない。仏教語としては、特定の対象への執着や差別を離れた慈悲をいう。
例文
- 相手との利害や親疎を問わず支援する姿勢には、無縁慈悲の精神が感じられる。
- 菩薩は無縁慈悲をもって、あらゆる衆生の苦しみを救おうとすると説かれる。
- 災害時に見知らぬ人々へ手を差し伸べる行為を、無縁慈悲の実践として捉えることもできる。