一相無相
読み方:いっそう むそう
意味
仏教語。すべての事物は、表面上はさまざまな姿や違い(相)を示していても、究極的には固定不変の実体や区別すべき相をもたない、ということ。「一相」は万物が平等に一つの真実相であること、「無相」は固定的な形相・実体にとらわれないことをいう。
由来
仏典『維摩経(維摩詰所説経)』の「一相即是無相(ひとつの相はそのまま無相である)」という趣旨に基づく仏教語とされる。『維摩経』はインドで1~2世紀頃に成立したと考えられ、中国では鳩摩羅什による漢訳が406年頃に完成した。個々の差別相に執着せず、万物の平等な真実を説く思想を表す。
備考
日常会話ではほとんど用いない専門的な仏教語。「相」は単なる外見ではなく、事物を区別して認識させる特徴・あり方を指す。「無相」は何も存在しないという意味ではない。
誤用・混同注意
- 「一層無双」などと書くのは誤り。正しくは「一相無相」。
- 「無相」を『何も存在しないこと』と理解するのは不正確で、固定的な実体・特徴への執着がないことをいう。
例文
- 仏教では、一相無相の見地から、物事の違いに過度に執着しないことを説く。
- 講師は一相無相を取り上げ、固定観念によって他者を判断する危うさを説明した。
- 一相無相という考え方は、現象の背後にある平等性を見ようとする姿勢につながる。