一切行苦
読み方:いっさい ぎょうく
意味
この世のあらゆる「行」、すなわち因縁によって生じ、変化し、滅していく存在や現象は、永続せず思いどおりにならないため、根本的に苦であるという仏教の教え。ここでいう「苦」は単なる苦痛だけでなく、不満足・不安定であることも指す。
由来
古代インド仏教の基本思想に由来する仏教語。釈迦の教えとして、紀元前5世紀頃から伝えられた「すべての形成されたもの(行)は苦である」という教説を漢訳した表現である。パーリ語仏典『法句経』などに対応する教えが見られ、中国で漢訳仏典を通じて「一切行苦」の形で定着した。
備考
「行」は行為だけでなく、因縁によって生じる一切の現象・形成物をいう仏教用語。「人生は苦しい」という単純な悲観論ではなく、執着から解放されるための現実認識を表す。
誤用・混同注意
- 「一切行苦」の「行」は、単に「行動・行為」の意味だけではなく、因縁によって生起する現象を指す仏教用語である。
- 「一切皆苦」と混同されることがあるが、いずれも仏教の教えを表す関連語であり、表記・構成は異なる。
例文
- 一切行苦という教えは、変化する物事に過度に執着しないことを促している。
- 栄華も衰えゆくという一切行苦の理を思えば、現在の成功だけを頼みにはできない。
- 僧は一切行苦を説き、苦しみの原因となる執着を離れるよう人々に教えた。