虚心実腹
読み方:きょしんじっぷく
意味
心中の知識・欲望・計らいを空しくして、腹を満たすこと。転じて、余計な欲や野心を抑え、生活の基本を充実させるという考えをいう。原典では、為政者が人民の知恵や欲望をいたずらに刺激せず、衣食を満たして安定させる統治のあり方を指す。
由来
中国古典『老子』第三章の「虚其心、実其腹(其の心を虚しくし、其の腹を実たす)」に基づく。『老子』は伝統的には春秋時代(紀元前6世紀ごろ)の老子の書とされるが、現在では戦国時代(紀元前4~3世紀ごろ)に成立・編集されたとみる説が有力である。この句を「虚心」「実腹」の四字にまとめたもの。
備考
日常会話での使用頻度は高くなく、主に老荘思想・漢文の文脈で用いられる。単に「謙虚で満腹である」という意味ではない。原典では、人民の欲望を抑えて生活を安定させる統治論として述べられる。
誤用・混同注意
- 「虚心」は単なる謙虚さ、「実腹」は単なる満腹を表す語と解するのは不正確である。
- 原典の「虚其心、実其腹」をそのまま四字熟語とみなさず、「虚心実腹」がその要約的な成句であることに注意する。
例文
- 老子のいう虚心実腹は、民の欲望をあおるよりも、まず暮らしを安定させるべきだという政治思想である。
- 虚心実腹の姿勢で、名声を追い求める前に日々の生活基盤を整えようと考えた。
- 彼は虚心実腹を座右の考えとして、余計な競争心にとらわれず、健やかな暮らしを大切にしている。