懸崖撒手
読み方:けんがい さっしゅ
意味
禅語で、切り立った崖にすがる手を放すように、生死や自我への執着を完全に捨て、悟りを求めること。転じて、退路を断ち、失敗や危険をも顧みない覚悟で重大な事に身を投じることをいう。
由来
中国宋代の禅問答集『碧巌録』(圜悟克勤が1125年頃に編纂)に見える禅語。「懸崖」は切り立った崖、「撒手」は手を放す意である。崖にすがる手まで放すという極限の比喩により、悟りのために生への執着や自己へのこだわりを断ち切る境地を表した。
備考
禅宗に由来する語で、日常会話での使用頻度は高くない。本来は無謀な行為を勧める語ではなく、悟りの妨げとなる執着を離れることの比喩である。現代では強い決意や背水の覚悟を表す比喩としても使われる。
誤用・混同注意
- 「懸涯撒手」と書くのは誤りで、正しくは「懸崖撒手」。
- 単に危険な行為や無鉄砲な行動を指す語と理解するのは不正確で、本義は執着を捨てる禅の修行上の比喩である。
例文
- 師は、悟りを求める者には懸崖撒手の覚悟が必要だと説いた。
- 彼は安定した職を辞し、懸崖撒手の思いで新事業に挑戦した。
- 改革を成し遂げるには、時に懸崖撒手のように退路を断つ決断も求められる。