恬淡虚無
読み方:てんたん きょむ
意味
心を静かに保ち、名誉・利益・物欲などにとらわれず、万事に執着しないこと。また、そのような心境。単に何もかも無意味だと考える虚無主義ではなく、欲望や雑念を離れた、平静で無欲なあり方をいう。
由来
中国の医学・養生書『黄帝内経』の「素問・上古天真論」にある「恬惔虚無、真気従之、精神内守、病安従来」に基づく。「恬惔」は心が静かで淡泊なこと、「虚無」は欲や雑念のない状態を表す。『黄帝内経』は戦国時代から漢代にかけて、おおむね紀元前3世紀〜後2世紀頃に形成・編纂されたとされるが、正確な成立年は不明である。日本では一般に「恬淡虚無」と書く。
備考
養生・修養・思想を語る硬い文章で用いられやすい。「虚無」は現代語の「むなしく無意味」という意味ではなく、欲望・雑念のない平静さを指す。日常会話ではやや文語的である。
誤用・混同注意
- 「虚無」を「人生は無意味だとする虚無主義」の意味だけで理解するのは不正確。
- 「恬淡」を「恬談」と書くのは誤り。
例文
- 彼は名声や財産に執着せず、恬淡虚無の境地で研究を続けている。
- 日々の雑念を離れ、恬淡虚無を心がけることが、心身を整える第一歩になる。
- その書には、世俗的な欲望から距離を置く恬淡虚無の趣が漂っている。