十界具足
読み方:じっかい ぐそく
意味
天台宗の教えで、地獄から仏までの十界(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天・声聞・縁覚・菩薩・仏)は、それぞれが他の九界を内に具えているとする考え。一人の心にも、苦悩・欲望・慈悲・悟りなど、十界すべてへ移り得る可能性があることをいう。
由来
中国天台宗の祖・智顗(ちぎ、538~597)が、法華経の「十如是」などを根拠に、6世紀末ごろ『摩訶止観』で体系化した一念三千の思想に基づく仏教語である。十界が互いに十界を具えるという「十界互具」の教説を表す語で、日本には平安時代に最澄らを通じて天台教学として伝わった。
備考
主に天台宗・日蓮系の仏教思想で用いられる専門語。「十界」は十種類の固定された場所ではなく、心に現れる生命状態・境地を指す。十界が相互に含まれることは「十界互具」ともいう。
誤用・混同注意
- 「十界」は十の独立した世界が単に並ぶという意味ではなく、各界が他の九界を内在させるという教説である。
- 「具足」を単に「十分に足りている」という日常語の意味だけで解釈しない。ここでは「すべてを具え持つ」の意である。
例文
- 十界具足の思想では、どのような悪人にも仏となる可能性があると考える。
- 彼は十界具足という教えを通して、人の心には多様な側面があると説明した。
- 苦しい状況で怒りに支配されることも、十界具足の観点からは心に備わる一つの境地と捉えられる。