一多相入
読み方:いった そうにゅう
意味
仏教、特に華厳宗の思想で、一つのものと多数のものとは互いに隔たりなく入り合い、関係し合っているということ。一つの中に全体が現れ、全体もまた一つの中に現れるという、万物の相互依存・相互浸透のあり方をいう。
由来
華厳宗の教理に基づく仏教語。「一」は個別の一事物、「多」は多数・全体を表し、それらが「相入」、すなわち互いに入り込むことを示す。根本となる思想は大乗仏教の華厳経に説かれ、中国の華厳教学で体系化された。とくに唐代の法蔵(643~712年)らによる華厳思想と深く結び付くが、「一多相入」という四字の定型句そのものの初出年は明確ではない。
備考
日常会話で用いる語ではなく、仏教思想・哲学・美術論などで使われる専門的な表現である。「一多相即」と近いが、相即は一と多が本質的に一体であること、相入は相互に入り合うことに重点がある。
誤用・混同注意
- 「一多相即」と混同されやすいが、これは別の関連する仏教語である。
- 「相入」を「相互に侵入する」という対立的な意味に解するのは不適切で、仏教では隔てなく相互に入り合うことをいう。
例文
- 華厳の一多相入の思想は、個人と社会が切り離せない関係にあることを考える手掛かりになる。
- 庭園の石や水や木々が全体の景観を形作るさまを、彼は一多相入になぞらえた。
- 一多相入という見方に立てば、小さな行為も世界全体とのつながりの中で捉えられる。