無住涅槃
読み方:むじゅう ねはん
意味
大乗仏教、特に唯識思想でいう最高の涅槃。迷いの世界である生死にとどまらず、かといって静寂な涅槃だけにも安住しない境地を指す。智慧によって執着を離れ、慈悲によって衆生を救うために活動し続ける仏・菩薩のあり方である。
由来
「無住涅槃」は、一般に「無住処涅槃」を略した呼称である。大乗仏教・唯識派で説かれる涅槃の一種で、サンスクリット語 apratiṣṭhita-nirvāṇa の漢訳に当たる。中国・唐代、玄奘が659年ごろに漢訳・編纂した『成唯識論』などで、慈悲と智慧を備え、生死にも涅槃にも執着してとどまらない仏の境地として体系的に説かれた。
備考
「無住処涅槃」がより正式で一般的な呼称であり、「無住涅槃」はその略称として用いられる。日常語ではなく、仏教思想・唯識学の専門語である。
誤用・混同注意
- 「無住」を単に「住む場所がない」という物理的な意味に解するのは不正確で、生死と涅槃のいずれにも執着してとどまらない意である。
- 「無住処涅槃」は誤記ではなく、同義の正式・一般的な呼称である。
例文
- 大乗仏教では、菩薩が慈悲をもって衆生を救い続ける境地を無住涅槃という。
- 講義では、無住涅槃とは生死にも寂滅にも執着しないあり方だと説明された。
- 自己の解脱だけに安住しない無住涅槃の思想は、大乗仏教の理想をよく表している。
分類
類義語
- 無住処涅槃