己飢己溺
読み方:こき こでき
意味
他人が飢えたり水に溺れたりして苦しんでいることを、自分自身の飢えや溺れであるかのように受け止め、その救済を自分の責任として尽くすこと。とくに為政者や指導者が、民衆の困苦に深く責任を感じて救おうとする姿勢をいう。
由来
中国・戦国時代の儒学書『孟子』の「離婁下」に由来する。孟子は、禹は天下に溺れる者があれば「自分が溺れさせたのだ」と思い、后稷は天下に飢える者があれば「自分が飢えさせたのだ」と思った、と述べた。これを縮めて、他者の苦しみを自らの責任として救おうとする精神を「己飢己溺」という。『孟子』の成立は紀元前4〜3世紀ごろとされる。
備考
日常会話ではあまり用いない硬い文章語で、政治・福祉・慈善などの文脈で使われる。単に同情することではなく、他者の苦難を自分の責任として救済に尽くす態度を表す。
誤用・混同注意
- 文字どおり「自分自身が飢えたり溺れたりすること」と解するのは誤り。他者の苦しみを自分の責任として救おうとする意である。
- 「人飢己飢」や「人溺己溺」と混同されることがあるが、これらは同趣旨の関連表現である。
例文
- 災害で食料を失った人々への支援に、彼は己飢己溺の思いで奔走した。
- 行政には、困窮する市民を己飢己溺と受け止め、迅速に救済する姿勢が求められる。
- その医師は遠方の被災地にも、己飢己溺の精神で医療支援に赴いた。
分類
類義語
- 人飢己飢
- 人溺己溺
- 博愛精神
- 救民済世
対義語
- 利己主義
- 袖手傍観
- 我関せず