哀而不傷
読み方
あいじ ふしょう
意味
悲しみの情感を表してはいるが、度を越して人を深く傷つけたり、心を乱したりするほどではないこと。悲哀を抑制のある穏やかな形で表現しているさまをいう。主に詩歌・音楽・文学などの評価に用いられる。
由来
中国古典『論語』八佾篇にある孔子の言葉「『関雎』は、楽みて淫せず、哀しみて傷らず(楽而不淫、哀而不傷)」に由来する。『関雎』は『詩経』の詩で、孔子がその音楽性・詩情を、感情が過度に流れない理想的な表現として評したもの。『論語』の成立は、春秋時代の孔子(前551~前479年)の没後、戦国時代ごろとされる。
備考
日常会話よりも、漢文学・詩歌・音楽・美術などの批評で用いられる語。「傷」は身体の傷ではなく、感情が度を越して心を害することをいう。対句の「楽而不淫」と併せて引用されることが多い。
例文
- この挽歌は悲しい題材を扱いながらも哀而不傷であり、読む人の心に静かな余韻を残す。
- 監督は、登場人物の喪失感を哀而不傷の演出で描き、過度な感傷に陥るのを避けた。
- 古典詩に見られる哀而不傷の美は、悲哀と節度が調和している点にある。
類義語
- 中庸
- 中正平和
- 節度ある悲しみ