前後際断
読み方:ぜんご さいだん
意味
禅で、物事や存在はそれぞれ「今この時」のあり方に完結しており、過去と未来との境目・連続にとらわれないということ。転じて、過去への後悔や執着、未来への不安を離れ、現在の一瞬に徹する心のあり方をいう。
由来
鎌倉時代、道元が1233年ごろに著した『正法眼蔵』の「現成公案」に見える禅語である。道元は薪と灰を例に、薪は薪、灰は灰としてそれぞれの法位にあり、前後の際が断たれていると説いた。中国禅・仏教における時間観を背景とする。
備考
道元の『正法眼蔵』では、薪と灰の譬喩に関連して説かれる。単に過去や未来を忘れること、因果関係や責任を無視することを意味する語ではない。日常語では専門的な禅語である。
別表記
- 前後際斷
誤用・混同注意
- 「前後裁断」と書くのは誤り(正しくは「前後際断」)。
- 「前後関係を無視すること」と解するのは不正確で、禅における時間・存在の捉え方を表す語である。
例文
- 禅の講話で前後際断という語を学び、過去の失敗を悔やみ続けるより、今なすべき仕事に集中しようと思った。
- 茶席では前後際断の心で、先ほどの会話にも次の予定にもとらわれず、一服の茶に向き合う。
- 彼は前後際断と自らに言い聞かせ、結果への不安をいったん離れて、目の前の稽古に打ち込んだ。
分類
類義語
- 一念不生
- 即今当処
対義語
- 前後相続