人心惟危
読み方:じんしん これ あやうし
意味
人の心は私欲や感情に左右されやすく、道を踏み外す危険がある、という意味。正しい道理を求める「道心」に対し、欲望に傾きやすい「人心」の不安定さ・危うさを戒める言葉である。
由来
中国古典の『書経(尚書)』「大禹謨」にある「人心惟危、道心惟微、惟精惟一、允執厥中」に基づく。伝統的には、帝舜が禹に政治・修養の要諦として授けた言葉とされる。一方、現行の「大禹謨」は東晋期(4世紀頃)に成立した古文尚書の篇であり、後世の偽作とする説も有力で、本文の成立事情には議論がある。
備考
漢文の訓読では「人心惟れ危し」と読む。単独でも用いるが、通常は「道心惟微」と対にして引用される。宋代以降の儒学では、後半を含む十六字の句が「十六字心伝」として重視された。
誤用・混同注意
- 「じんしんいき」と音読みしない。標準的には「じんしんこれあやうし」と読む。
- 人間の心は本来悪であると断定する語ではなく、私欲や感情に傾きやすい心の危うさを戒める表現である。
例文
- 人心惟危という戒めを踏まえ、権力を持つ者ほど私欲を抑える仕組みが必要だ。
- 先生は人心惟危を引用して、感情だけで重要な判断をしてはならないと説いた。
- 「人心惟危、道心惟微」という対句は、人が道理を保ち続けることの難しさを表している。
分類
類義語
- 人欲横流
- 私利私欲