死者をして死者を葬らしめよ
読み方:ししゃ をして ししゃ を ほうむらしめよ
意味
本当に果たすべき大きな使命や信仰上の務めを優先し、世俗的な慣習や、使命を理解しない人々に任せられる事柄にとらわれてはならない、という教え。「死者」は、葬られる肉体としての死者と、霊的・信仰的な意味で生きていない人の両方を掛けた表現である。
由来
新約聖書にあるイエス・キリストの言葉で、成立は紀元1世紀後半とされる。マタイによる福音書8章22節およびルカによる福音書9章60節で、父を葬ってから従いたいと願う者に対し、イエスが「死人をしてその死人を葬らしめよ」と答えた場面に由来する。日本語の「死者をして~葬らしめよ」は文語訳聖書風の言い回しである。
備考
原義はキリストに従う使命の優先を説く聖書の文脈にある。現代では、葬儀や家族への責任を実際に軽んじてよいという意味で用いるのは不適切。文語的で、日常会話ではあまり使わない。
別表記
- 死人をして死人を葬らしめよ
- 死人をしてその死人を葬らしめよ
- 死者に死者を葬らせよ
- 死人に死人を葬らせよ
誤用・混同注意
- 文字どおり「死んだ人間が死体を埋葬する」という不可能な場面を述べた言葉だと解するのは誤り。通常は、前の「死者」を霊的・信仰的に生きていない人々になぞらえた比喩として読む。
- 葬儀や親族への責任を常に捨てるべきだという一般論ではない。キリストへの従属と使命の緊急性を説く聖書中の発言である。
例文
- 彼は家業のしがらみに縛られながらも、社会を変える仕事に身を投じた。まさに「死者をして死者を葬らしめよ」という覚悟だった。
- 細かな儀礼や形式だけに時間を費やすより、今救うべき人を救えという意味で、「死者をして死者を葬らしめよ」という言葉が引かれた。
- 研究の本筋を見失って雑務に追われている後輩に、先生は「死者をして死者を葬らしめよ、まず自分の使命を考えなさい」と諭した。