麦秀黍離
読み方:ばくしゅう しょり
意味
国が滅亡した後、かつて栄えた都や宮殿の跡が荒れ、麦や黍(きび)だけが茂っているのを見て、昔の繁栄と現在の荒廃の落差を悲しむこと。転じて、滅びた国・故郷・組織などを惜しみ、その盛衰を嘆く気持ちをいう。
由来
中国古典に由来する。殷が周に滅ぼされた後(紀元前11世紀ごろとされる)、殷の遺臣である箕子が旧都を通り、宮室が壊れ、麦や黍が生い茂る光景を悲しんで「麦秀」の詩を作ったという故事が『史記』宋微子世家に見える。また、荒廃した旧都を嘆く『詩経』王風「黍離」の情景とも結び付き、「麦秀黍離」という語になった。『史記』の成立は前漢・司馬遷による紀元前1世紀ごろ。
備考
日常会話で頻出する語ではなく、歴史・文学・追悼の文脈で用いられる雅語である。単なる「荒れ地」ではなく、滅亡後の故都を見て抱く哀惜や盛衰の感慨を含む。
誤用・混同注意
- 「麦秀」は豊作や麦の収穫を喜ぶ意味ではなく、滅亡した旧都に麦が茂る荒廃の情景を表す。
- 「麦秋黍離」とするのは誤りで、正しくは「麦秀黍離」。
例文
- 戦災の資料写真に残る旧市街の姿には、まさに麦秀黍離の感がある。
- 閉鎖された工場跡を訪れ、草木だけが茂る様子を見た彼は麦秀黍離の思いに沈んだ。
- 王朝の旧都を歩きながら、案内人はこの遺跡が人々に麦秀黍離の感慨を抱かせると説明した。
分類
類義語
- 黍離之悲
- 亡国之恨
- 故国喪失
対義語
- 国泰民安
- 太平盛世