物我両忘
読み方
ぶつが りょうぼう意味
外界の事物である「物」と、自分自身である「我」との区別や対立をともに忘れ去ること。自他・主客の分別を超え、対象と一体になったような無心の境地をいう。禅や芸道で、雑念や執着を離れて深く没入した状態を表すことが多い。由来
「物我」は外物と自己、「両忘」はその二つをともに忘れる意。仏教、とくに禅の主客不二・無我の思想を背景に、漢文訓読や禅語として用いられた語である。成語としての厳密な初出年は不詳だが、中国の禅思想を受けた中世日本、鎌倉〜室町期以降の禅林・芸道の文脈で広まったと考えられる。備考
日常会話ではやや硬く、禅・茶道・書道・武道・芸術論などで用いられる。単なる集中より、自己意識や対象との対立を超えた精神状態を強調する語。例文
- 彼は筆を執ると、時間も周囲の音も忘れ、物我両忘の境地で書に向かった。
- 名人の演奏には、技術を超えて物我両忘に至った者だけが放つ静かな迫力があった。
- 座禅を続けるうちに、自己と世界の境目が薄れ、物我両忘という言葉の意味を少し感じた。
- 剣の稽古では、勝とうという意識すら捨て、物我両忘の心で相手と向き合えと教えられた。
- 研究に没頭している彼の姿は、まさに物我両忘で、食事の時間にも気づかないほどだった。
類義語
- 主客一如
- 自他不二
- 物心一如
- 無我
- 三昧境
- 無我夢中
対義語
- 主客対立
- 物我対立
- 自他分別
- 我執
- 執着