一念多念
読み方:いちねん たねん
意味
浄土教で、念仏を一度称えることをいう「一念」と、何度も称えることをいう「多念」を併せた語。特に、往生・救済が最初の一声の念仏で定まるとする見方と、称名を重ねることを重んじる見方に関する教義上の問題を指す。単に「一つの考えと多くの考え」という意味ではない。
由来
「一念」「多念」は、中国の浄土教で用いられてきた念仏に関する語である。日本では平安末期から鎌倉時代にかけて、法然門下で、一回の称名で往生が定まるとみる一念義と、称名を続けることを重んじる多念義が論点となった。13世紀(鎌倉時代)には親鸞が『一念多念文意』でこの問題を詳しく解説し、語が広く知られるようになった。
備考
主に浄土教・浄土真宗の文脈で使われる専門語で、日常会話での使用はまれである。親鸞の教えでは、一念と多念を単純な二者択一としてのみ扱わない。
誤用・混同注意
- 「一念発起」のように強い決意を表す一般語、または単に「一つの思いと多くの思い」を表す語だと理解するのは誤り。
例文
- 浄土真宗の教義を学ぶ講義で、一念多念をめぐる念仏理解の違いを扱った。
- 親鸞の『一念多念文意』は、一念多念の問題を信心と報恩の称名という観点から説明している。
- 一念多念を、念仏は一度だけでよいという単純な標語として理解するのは適切ではない。